BEACOPP療法

BEACOPPは、ドイツのホジキンリンパ腫研究グループ(GHSG)により開発された、進行期のホジキンリンパ腫を対象とした治療法です。ドイツで開発されたこともあり、欧州での研究が進んでいます。

BEACOPP療法について

目次

BEACOPPと増量BEACOPP

BEACOPPという名称は、ABVDや他の化学療法と同様に、治療で使用される薬剤の頭文字です。

B:ブレオマイシン

E:エトポシド

A:ドキソルビシン(別名:アドリアマイシン)

C:シクロホスファミド

O:ビンクリスチン(別名:オンコビン)

P:プロカルバジン

P:プレドニゾロン

BEACOPP療法にはBEACOPPと増量BEACOPPと呼ばれる療法がありますが、両方とも同じ薬剤が用いられます。違いは、「増量」とあるように、増量BEACOPPの方が薬剤の用量が多くなります。増量BEACOPPの場合、一般的に海外ではメスナと呼ばれる薬剤が治療前に投与されます。

BEACOPP療法で使用する薬剤

ブレオマイシン

ブレオマイシンは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、「抗腫瘍抗生物質」に分類されています。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • ブレオマイシンが原因で、重篤または生死に関わる肺障害が起こることがあります。重篤な肺障害は、高齢患者に加えて高用量のブレオマイシンを投与されている患者に一般的に見られます。
  • 悪性リンパ腫の治療でブレオマイシンの投与を受けると、患者の中には重度のアレルギー反応を起こす人がいます。このようなアレルギー反応は、ブレオマイシンの初回または2回目の投与直後、あるいは投与を行ってから数時間後に起こります。

エトポシド

エトポシドは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、「植物性アルカロイド」および「トポイソメラーゼII阻害薬」に分類されます。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • 投与を受けた30%以上の患者に、白血球数の減少と血小板の減少が見られました。これらの血球数が減少することで、重篤感染症や出血が起こるリスクが高まります。

血球数値の増減が見られる期間

  • 数値が減少する期間:5~7日目
  • 数値が最も低くなる期間:7~14日目
  • 数値が回復する期間:21~28日目

ドキソルビシン

ドキソルビシンは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、ドキソルビシンは「アントラサイクリン系抗生物質」に分類されています。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • ドキソルビシンの投与を受けると、治療中だけでなく、治療を終えてから数ヶ月から数年後まで、重篤または生死に関わる心臓障害が起こるリスクがあります。
  • ドキソルビシンの投与を受けると、白血病(白血球のがん)を発症するリスクが高くなります。特に、高用量の投与を受けた時、あるいは他の化学療法剤および放射線療法と併用した時、このリスクが高くなります。
  • ホジキンリンパ腫の治療では行われませんが、ドキソルビシンとシクロホスファミドを併用すると、急性骨髄性白血病または骨髄異形成症候群のリスクが高くなります。
  • 白血球、赤血球、血小板の数が一時的に減少し、感染や貧血、あるいは出血のリスクが高まります。

血球数値の増減が見られる期間

  • 数値が最も低くなる期間:10~14日目
  • 数値が回復する期間:21~28日目

シクロホスファミド

シクロホスファミドは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、「アルキル化剤」に分類されます。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • 白血球、赤血球、血小板の数が一時的に減少するので、感染や貧血、あるいは出血のリスクが高まります。
  • 刺激性の抗がん剤なので、大量に投与すると刺激が強くなります。刺激から膀胱を守り、出血性膀胱炎や血尿を予防する目的で、シクロホスファミドを投与する前に、メスナの投与が行われることがあります。

血球数値の増減が見られる期間

  • 数値が減少する期間:7日目
  • 数値が最も低くなる期間:10~14日目
  • 数値が回復する期間:21日目

ビンクリスチン

ビンクリスチンは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、「植物性アルカロイド」に分類されます。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • 白血球、赤血球、血小板の数が一時的に減少するので、感染や貧血、あるいは出血のリスクが高まります。

血球数値の増減が見られる期間

  • 数値が減少する期間:7日目
  • 数値が最も低くなる期間:7~10日目
  • 数値が回復する期間:21日目

プロカルバジン

プロカルバジンは、抗がん(「抗悪性腫瘍性」または「細胞毒性」)の化学療法薬で、プロカルバジンは、「アルキル化剤」に分類されます。

副作用・使用にあたっての注意事項

  • 白血球と血小板の数が減少するので、感染リスクと出血リスクが高まります。

血球数値の増減が見られる期間

  • 数値が減少する期間:特になし
  • 数値が最も低くなる期間:治療後3週から6週間
  • 数値が回復する期間:血小板 4~6週間

プレドニゾロン

プレドニゾロンはがん治療のために用いられて、糖質コルチコステロイドに分類されます。

BEACOPP療法の1クール

BEACOPP療法は、3週間(21日)をひとつのクール(コース、サイクル)とし、病気の進行によって2クールから8クールまで繰り返し行われます。

BEACOPP療法1クール                          (日目)                                                                     

抗がん剤名123456789101112131415161718192021
ブレオマイシン
エトポシド
ドキソルビシン
シクロホスファミド休薬
ビンクリスチン
プロカルバジン
プレドニゾロン

8日目から14日目は増量BEACOPPのみ

プロカルバジンカプセル・プレドニゾロン錠の服用に関する注意

BEACOPP療法では、プロカルバジンカプセルとプレドニゾロン錠を服用します。主治医や看護師の指示に従って、必ず決められた日と時間を守って服用することが重要とされています。

プロカルバジンカプセル

プロカルバジンカプセルは7日間服用します。カプセルを服用するときは、必ずコップ一杯の水を飲みます。絶対に、カプセルを噛んだり、開いたり、つぶしたりしないでください。薬を飲む時間を決めて、毎日同じ時間に服用するようにします。

万が一、プロカバジンカプセルを飲み忘れた場合は、飲み忘れたことに気づいた時点で速やかに服用します。それでも、飲み忘れたことに気づいた時、すでに長時間が経過していて、次に薬を飲む時間の数時間前だった場合は、その回はプロカルバジンの服用を休みます。間違っても、何があっても、一度に2回分の薬を服用しないでください。

プレドニゾロン錠

プレドニゾロン錠は、BEACOPPの場合は7日間、増量BEACOPPの場合は14日間服用します。プレドニゾロン錠剤は、必ず朝食後に服用します。服用時に胃の中に食物があると、胃腸障害や消化不良のリスクを軽減することができます。また、プレドニゾロンを午後の遅い時間に服用すると、夜中に目がさえて眠れなくなることがあるので、なるべく午前中に服用するのが望ましいです。

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