古典的ホジキンリンパ腫の化学治療を受けた成人患者の死因

古典的ホジキンリンパ腫患者は、最新の化学療法による延命効果を享受できるようになり、治療後も長期生存が可能になりました。それでも、患者に小児や若年成人が多いこともあり、治療後のがん再発や死因についての不安が残りの人生において消えることがありません。

この不安に応えるべく、米国で化学療法を第一選択治療として受けた成人患者の死亡パターンを調べる集団コホート研究が行われました。

古典的ホジキンリンパ腫の化学治療を受けた成人患者の死因について

古典的ホジキンリンパ腫治療の変遷

以前は、古典的ホジキンリンパ腫の治療法として放射線療法が主流でしたが、近年において、多剤併用療法ABVD(ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン)は、米国のみならず、世界的にホジキンリンパ腫患者の第一選択治療となりました。

かつて主流だった放射線療法

それと平行して、古典的ホジキンリンパ腫の第一選択治療としての放射線療法は、過去20年において受ける患者の割合が減少の一途をたどり、1999年から2008年の期間では、米国における早期および進行期の古典的ホジキンリンパ腫患者の10%にも届かなくなりました。

放射線療法を受ける患者が減少した原因として、放射線を照射した部位の二次がん発症リスクが高くなったことが挙げられます。特に、胸部に放射線の照射を受けた患者に、肺がんや乳がんが発症する割合が高くなる傾向が見られました。加えて、過去においては、放射線を照射する範囲が広かったこともあり、腫瘍の周囲にある健康な細胞まで破壊される可能性が高かったので、二次がんのリスクも高くなると考えられていました。

米国の大規模な集団ベースコホート研究

米国で行われた大規模な集団ベースコホート研究において、一般集団と比べて古典的ホジキンリンパ腫生存者は、治療後も全死因死亡リスクが有意に高いことが明らかになりました。

集団ベースコホート研究とは

地域ベースのコホート研究と呼ばれることもあります。ある特定の地域において、特定の条件に当てはまる集団と当てはまらない一般集団を比較し、様々な角度から分析・検討する研究のことです。

本研究の概要

本研究では、SEER(監視、疫学、および最終結果)に登録されたデータを用いて、2000年から2015年の期間において、初発かつ原発の古典的ホジキンリンパ腫と診断され、第一選択治療として化学療法を受けた成人患者が選別されました。その後、古典的ホジキンリンパ腫患者の死亡率と、年齢、性別、暦年で一致させた一般集団の期待死亡数を比較して、標準化死亡比が算出されました。

標準化死亡比は、古典的ホジキンリンパ腫患者を早期(ステージ1・2)と進行期(ステージ3・4)にグループ分けし、それぞれのグループについて調べられました。

最終的には、20歳から74歳までの2万007名の成人患者が分析の対象となり、そのうちの40%がステージ3またはステージ4の古典的ホジキンリンパ腫と診断された患者で構成されていました。平均8年の追跡期間において、2万007名のうち3380名の患者が死亡しました。死因の内訳は、59%が悪性リンパ腫、31%ががん以外の死因、9%が他の新生物、2%が不明でした。

本研究の主な結果

12年の追跡期間中において、一般集団と比較して古典的ホジキンリンパ腫患者には以下のことが観察されました。

  • 悪性リンパ腫を除いた全原因による死亡の標準化死亡比は、進行期と診断された患者で2.2(、早期と診断された患者で1.5であった。
  • がんに関係ない死亡の標準化死亡比は、進行期と診断された患者で2.4(、早期と診断された患者で1.6であった。
  • 間質性肺疾患による死亡の標準化死亡比は、進行期と診断された患者で22.1、早期と診断された患者で13.1となり、このリスクは、古典的ホジキンリンパ腫と診断されてから1年間において最も高くなる傾向が見られた。
  • 良性血液疾患、薬物暴露(有害事象)、および感染症による死亡の統計的に有意な標準化死亡比は、進行期と診断された患者で3~10、早期と診断された患者で2~3となった。
  • 消化器疾患と心臓病による死亡の標準化死亡比についても、一般集団と比べて進行期と早期の両患者グループについて有意に高くなる傾向が見られた。
    • 早期の患者と進行期の患者における心臓病による死亡の標準化死亡比は、古典的ホジキンリンパ腫と診断されてから1年間において最も高くなったが、診断後5年以降でも心臓病による死亡リスクの絶対的増加を示すエビデンスがあった。
  • 有害事象による死亡の標準化死亡比は、古典的ホジキンリンパ腫と診断された時に60歳から74歳の患者で顕著に高くなる傾向が見られた。この年齢の進行期と診断された患者で73.8、初期の患者で40.3でした。
  • 肺がんによる死亡の標準化死亡比は、進行期と診断された患者で1.8、早期と診断された患者で1.4であった。
  • 骨髄異形成症候群あるいは急性骨髄性白血病による死亡の標準化死亡比は、進行期と診断された患者で7.9、早期と診断された患者で4.5であった。

本研究のまとめ・課題

第一選択治療として放射線療法が使われる頻度が減っていますが、2000年から2015年の期間において化学療法を受けた患者は、古典的ホジキンリンパ腫の病期と患者の年齢に関係なく、初期(1年以内)および晩期における心臓病に関わる死亡リスクが高くなる傾向が見られました。

加えて、心臓病、間質性肺疾患、感染症、有害事象による超過死亡のパターンは、全患者の死亡率低下を目的に診断時からの厳密なモニタリングと介入の必要性を裏付けており、特に、進行期の患者と診断時に高齢の患者に特別な配慮が必要なことを示しています。

本研究では、患者の転帰改善を目的とした監視プロトコルと介入、より改良された治療法、ならびに新しい古典的ホジキンリンパ腫の治療学を考案するために、継続的な努力を行うことの重要性が浮き彫りになりました。

コメントを残す