ホジキンリンパ腫は、一般的にはごく稀な悪性リンパ腫と言われていますが、米国では15歳から19歳の子供に最も一般的に見られるがんと言われています。この年齢グループのがん症例全体に占める小児ホジキンリンパ腫の割合は、約12パーセントにも達します。幸いにも、日本では、小児ホジキンリンパ腫の患者数は極めて少ないようです。
小児や青少年にホジキンリンパ腫が発生した場合、診断については成人と同じ方法で行うことができますが、治療については成人とは異なることがあります。
小児ホジキンリンパ腫について
小児ホジキンリンパ腫の傾向
全体的に見ると、青少年におけるホジキンリンパ腫の発生率は、男性よりも女性の方が高いのですが(男女比:0.8)、15歳未満の男子におけるホジキンリンパ腫の発生率は高く、5歳未満の場合は、女子よりも男子の方が最大で5倍も高くなります。
一般的な傾向として、小児・青少年のホジキンリンパ腫は、ステージ1やステージ2の場合は全生存率が90パーセントを上回りますが、ステージ3やステージ4の場合は全生存率が70パーセントという低い数字になることがあります。
小児に多くみられるホジキンリンパ腫の種類
結節性硬化型ホジキンリンパ腫
年長の子供と思春期の若者に好発 します。多くの場合、診断時に縦隔リンパ節腫大が認められます。
混合型ホジキンリンパ腫
10歳以下の子供に好発します。EBウイルス感染歴との関連があるとされており、首のリンパ節に病変が見られます。
結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫
稀なタイプのホジキンリンパ腫ですが、ステージ1で見つかる症例が過半数を占めます。一般的には、成人男性に好発しますが、子供の場合は10歳以下に発症します。診断時には自覚症状がないことが多いが、首や脇の下、鼠径部にリンパ節腫大が認められます。
小児ホジキンリンパ腫の診断方法
ホジキンリンパ腫の疑いのある子供の病歴と症状についての聞き取りを行ってから、診察が行われます。
その際、下記の検査が必要になることがあります。
- 血液検査・尿検査
- 胸部X線(CXR)
- リンパ節生検術
- CT検査
- MRI検査
- PET検査
- 骨髄(骨髄生検)
小児ホジキンリンパ腫の病期(ステージ)
小児ホジキンリンパ腫の病期分類には、一部重複する3つの異なる分類方法があります。
A、B、E、S
小児ホジキンリンパ腫は通常、従来の病気分類を行う前に、A、B、E、Sのいずれかで表記されます。
- A:診断時に無症状の場合
- B:診断時に熱、体重減少、あるいは寝汗の「B症状」が見られる場合
- E:がん細胞がリンパ系の一部ではない臓器または臓器に隣接する組織に見つかった場合
- S:がん細胞が脾臓に見つかった場合
I、II、III、IV
小児ホジキンリンパ腫の場合、病期(ステージ)にはA、B、E、Sの表記が含まれます。
- ステージI:がん細胞が1個以上のリンパ節にあるが、同一リンパ節群のみにある場合。
- ステージIEは、リンパ系を除いた1個の臓器または1ヶ所の部位にがん細胞があります。
- ステージII:がん細胞が横隔膜より上または下にある2個以上のリンパ節群にある場合。
- ステージIIEは、横隔膜の上または下にある1つ以上のリンパ節群に加え、隣接する臓器のリンパ節群の外側にがん細胞があります。
- ステージIII:がん細胞が横隔膜の上および下にある1個以上のリンパ節群にある場合。
- ステージIIIEは、横隔膜の上および下にあるリンパ節群に加え、隣接する臓器のリンパ系の外側にがん細胞があります。
- ステージIIISは、横隔膜の上および下にあるリンパ節群に加え、脾臓にがん細胞があります。
- ステージIIE+Sは、横隔膜の上および下にあるリンパ節群、その周囲にある臓器、ならびに脾臓にがん細胞があります。
- ステージIV:がん細胞が、1個以上の臓器全体のリンパ節、ならびに臓器の近くにあるリンパ節にある、1個の臓器にあってその臓器から遠く離れたリンパ節に転移している、あるいは肺、肝臓、骨髄にあります。
リスクグループ
古典的小児ホジキンリンパ腫は、腫瘍の大きさ(5cm以上のものを「バルキー」と定義)に加え、いわゆる「B」症状の有無によってリスクグループに分けられます。
- 低リスク:バルキーな腫瘍またはB症状が見られないステージIまたはステージII
- 中リスク:バルキーな腫瘍またはB症状が見られるステージIまたはステージII、あるいはB症状が見られないステージIIIまたはステージIV
- 高リスク:B症状が見られるステージIIIまたはステージIV
小児ホジキンリンパ腫の治療法
小児ホジキンリンパ腫は、ほとんどの患者で完治が望まれます。治療法は、病期(ステージ)は何か、古典的ホジキンリンパ腫の場合にはどの亜種か、将来妊娠を希望するかなどの要因により異なります。場合によっては、1種類以上の治療法が使用されることがあります。
ホジキンリンパ腫は、下記のいずれの方法で治療することができます。
化学療法
強力な薬剤ががん細胞を殺してがんの成長を止めます。静脈から血液に直接注入する方法(点滴静脈注射)、注入する方法(注射)、口から飲む方法(経口)により、薬剤を投与します。
放射線療法
高エネルギーのX線などの放射線です。がん細胞を殺してがんの成長を止めるために照射されます。
手術
手術で腫瘍を完璧に取り除くことが可能な場合に行われます。
幹細胞移植併用大量(高用量)化学療法
子供またはそれ以来の人から未熟な血球細胞(幹細胞)を取り出します。その後に大量化学療法を行って、骨髄内にあるがん細胞を殺してから幹細胞を輸注します。幹細胞が骨髄に戻ると、新しい健康な血球細胞を造るようになります。
標的治療
これらの薬剤は、健康な細胞とは異なるリンパ腫細胞内外の変化を狙い撃ちします。健康な細胞へのダメージを抑えながら、がん細胞を殺すことができます。
支持療法
ホジキンリンパ腫とその治療により副作用が起こることがあります。薬剤や他の治療を用いることで、痛みや熱、感染、吐き気、嘔吐を緩和することができます。
臨床試験(治験)
ほとんどの小児ホジキンリンパ腫は臨床試験により治療が行われます。臨床試験に参加することで、患者は現在最も優れた治療を受けることができることに加え、より優れていると考えられる新しい治療を受けることができる可能性もあります。
化学療法剤の組み合わせ
小児に対しては、反応性に基づくドーズ・デンス治療が行われます。下記は、小児および青年に対する治療において一般的に使用される化学療法剤の組み合わせです。
ABVD
アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン
AV-PC
アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ビンクリスチン(オンコビン)、プレドニゾン、シクロホスファミド
ABVE
アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ブレオマイシン、ビンクリスチン(オンコビン)、エトポシド
ABVE-PC
アドリアマイシン(ドキソルビシン)、ブレオマイシン、ビンクリスチン(オンコビン)、エトポシド、プレドニゾン、シクロホスファミド
BEACOPP
ブレオマイシン、エトポシド、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プロカルバジン、プレドニゾン
OEPA/COPDAC
オンコビン(ビンクリスチン)、エトポシド、プレドニゾン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニゾン、ダカルバジン
OEPA/COPP
オンコビン(ビンクリスチン)、エトポシド、プレドニゾン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、シクロホスファミド、オンコビン(ビンクリスチン)、プレドニゾン、プロカルバジン
VAMP
ビンブラスチン、アドリアマイシン(ドキソルビシン)、メトトレキサート、プレドニゾン